2025年7月12日

ST合剤 奇形リスク JAMA
ペスト 米国 

● ST合剤 奇形リスク
Summary
妊娠第1トリメスターの尿路感染症に用いられる抗生物質と、胎児先天奇形リスクの関連性について調査した。複数の抗生物質、nitrofurantoin, trimethoprim-sulfamethoxazole (TMP-SMX), fluoroquinolones, and β-lactams について、先天奇形リスクを比較したところ、第1トリメスターの TMP-SMX は、β-ラクタム系抗生物質と比べて、一部の先天奇形リスクが増加することが示された。

 情報源 JAMA Network Open 2025年7月9日
原著タイトル First-Trimester Antibiotic Use for Urinary Tract Infection and Risk of Congenital Malformations. JAMA Netw Open. 2025;8(7):e2519544.
Abstract
意義: 
ガイドライン Clinical guidelines において、尿路感染症が母体および新生児に重篤な影響を及ぼす可能性があるため、妊娠初期の細菌尿スクリーニングと治療が推奨されている。妊娠初期の抗生物質への暴露と先天性奇形にに関するエビデンスは限られ一定していない。
目的: 
第1トリメスターに尿路感染症治療のために暴露した異なる抗生物質の、先天奇形リスクを比較した。
デザイン Design, Setting, and Participants: 
This population-based cohort study included commercially insured pregnant individuals aged 15 to 49 years who were treated for UTI and linked liveborn infants in the Merative MarketScan Commercial Database (2006-2022).
暴露: 
First-trimester antibiotic prescription fill of nitrofurantoin(ニトロフラントイン、国内販売なし*) trimethoprim-sulfamethoxazole (TMP-SMX), fluoroquinolones (ciprofloxacin, levofloxacin, ofloxacin), and β-lactams to treat UTI.
Main Outcomes and Measures: 
生後365日以内までの先天奇形 (any and by organ system) が確認された identified using validated algorithms based on diagnosis codes up to 365 days after birth。
Log-binomial regression models were used to estimate propensity score-weighted risk ratios (RRs) and risk differences.
結果: 
The cohort of 71 604例の妊娠 eligible pregnancies (median maternal [IQR] age, 30 [27-34] years) のうち、 42 402 (59.2%) nitrofurantoin-exposed, 3494 (4.9%) TMP-SMX-exposed, 3663 (5.1%) fluoroquinolone-exposed, and 22 045 (30.8%) β-lactam-exposed individuals にそれぞれ暴露していた。
抗生物質によって、暴露した妊娠週数(時期)が異なっていた Median (IQR) gestational age differed by antibiotic (nitrofurantoin, 62 [45-77] days; TMP-SMX, 26 [13-59] days; fluoroquinolones, 18 [9-27] days; β-lactams, 63 [48-77] days)。
すべての奇形に関する絶対リスク The absolute risk of any malformation は
 β-ラクタム 19.8 (95% CI, 18.0-21.8) per 1000 infants 
 ニトロフラントイン 21.2 (95% CI, 19.9-22.7) per 1000 infants
 フルオロキノロン 23.5 (95% CI, 18.8-28.9) per 1000 infants 
 ST 合剤 26.9 (95% CI, 21.8-32.8) per 1000 infants だった。
交絡因子の調整後の奇形リスク risk of any congenital malformation は TMP-SMX (RR, 1.35; 95% CI, 1.04-1.75) がより高く、nitrofurantoin (RR, 1.12; 95% CI, 1.00-1.26) and fluoroquinolones (RR, 1.18; 95% CI, 0.87-1.60) は β-lactams と同程度であった。
TMP-SMX は、重症心奇形 severe cardiac malformations (RR, 2.09; 95% CI, 1.09-3.99), 他の心奇形 other cardiac malformations (RR, 1.52; 95% CI, 1.02-2.25), 口唇口蓋裂 cleft lip and palate (RR, 3.23; 95% CI, 1.44-7.22) のリスクが、β-lactams よりも高かった; however, for these specific malformations, the corresponding risk difference estimates included the null. 
他の奇形リスク Risk of other malformation types は薬剤による相違はなかったが、一部の評価は正確ではなかった。
Results were generally consistent across sensitivity analyses.
結論 Conclusions and Relevance: 
第1トリメスターに抗生物質に暴露した今回のコホート研究において、TMP-SMX に暴露した胎児は β-lactam(暴露)の胎児と比較して、奇形全般、重症心奇形、他の心奇形、口唇口蓋裂のリスクが高かった。
No elevated risk was observed for nitrofurantoin.

● サルモネラ感染症 カナダ、米国(2件)
カナダ (ALBERTA, ONTARIO, MANITOBA) 
Summary
豚肉調理食品 pork deli meats が関係するサルモネラ感染症アウトブレイクが拡大している。食料品店で販売され、またサンドイッチに使用されたサラミ specific brands of salami が関係しており、問題の食品は回収されている。脆弱な人々は特に重症化するおそれがある。報告が遅れており、調理過程での交差汚染のおそれがあることが強調されている。

米国 CDC
Summary
複数の州で発生するサルモネラ感染症アウトブレイクの調査の結果、August Egg Company 社のタマゴが関係することが明らかになった。患者からの聞き取りなどの疫学データから、タマゴが感染源であることが示された。遺伝学的検査などの検査解析により、患者の細菌とタマゴの供給元のサンプルの関連が確認された。同社は回収を発表している。

● ロタウイルス ヨルダン
Summary
下痢、嘔吐、発熱などの症状のウイルス感染症アウトブレイクの原因はロタウイルスであったと、当局者が明らかにした。感染経路、感染しやすいグループ、典型的な経過などについて説明した。治療、ワクチンを含む予防についても述べている。スイカなどの果物が原因であることは否定されているが、適切な衛生遵守の重要性が強調されている。

● ペスト 米国 (ARIZONA)
Summary
Coconino County の住民1名が肺ペストで死亡した。郡内で2007年以来の死亡例である。感染性のノミを介して動物から感染することが多く、ヒトーヒト感染は稀である。保健当局者は野生動物やノミと接触しない対策をとり、げっ歯類の大量死について報告するよう求めている。ヒトの症状には、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛などがあり、早期治療により治癒する。

● 原因不明の死亡 インド (TAMIL NADU) 
Summary
Hosur の若い男性1名の死亡について、狂犬病のおそれがあるとの不安が広がっているが、保健当局は心臓疾患によると説明している。複数の医療機関で当初疑われていたが、剖検結果等から狂犬病は除外されている。ただし詳しい検査が行われることになっており、念の為、接触者らへの狂犬病ワクチン接種が行われている。

● マラリア インド (ODISHA)
Summary
2名の学生がマラリア検査で陽性になったのに続き、マラリア発生地域の寄宿学校で生徒の一斉スクリーニングが行われ、新たに10名の生徒の陽性が確認された。

● エムポックス ギニア、ガーナ、ワクチン買い占め(3件)
ギニア
Summary
保健当局が現在の疫学状況について、7件のアクティブな流行が発生していると発表した。シエラレオネを起源とするエムポックスは、感染力が強く懸念されている。Conakry を中心に集中的な調査が行われている。ジフテリアも特に小児では懸念されている。

ガーナ
Summary
7月6日、エムポックスの増加について報告された。新たな死亡例はなく、入院中の患者もいない。

Summary
富裕国がエムポックス・ワクチンを買い占め、アウトブレイクに晒されるアフリカ諸国が取り残されている。不均衡な配分によって価格上昇、サプライ制限、現地生産不足などの状況が悪化している。

● HIV/AIDS ガーナ
Summary
HIV 感染患者がもっとも多い地域は、The Greater Accra, Ashanti, and Eastern regions in Ghana である。特に若年者での、無防備な性交、危険な性行為、HIV の知識不足、低いコンドーム使用が原因である。

● 狂犬病 東ティモール
Summary
農業当局は、イヌとネコのための狂犬病ワクチンは十分確保されていると発表した。ヒトの狂犬病ワクチンが、不足を理由に使用が制限されていることを受けた反応である。

● COVID-19
Summary
モデルナ社製 COVID-19 ワクチンについて、感染によるリスクが高い生後6ヶ月以上への使用が米国で完全に承認された。健康な小児と妊娠女性への定期接種勧奨は取りやめられているが、健康な小児への接種の選択肢は残されている。
新たな変異株 XFG (Stratus) は世界中で急速に拡大している。オミクロンの再集合亜変異株でモニタリング変異株となっている。重症化するとのエビデンスはないが、急速に感染拡大し、免疫防御を回避する可能性がある。現行のワクチンは、この変異株にも有効性が保たれている。

● ニューカッスル病 インド (KERALA)
Summary
感染力の強いウイルス感染症のニューカッスル病により、Vallikunnam においてニワトリの大量死が発生した。農場から家庭に拡大しており、農家の不安が広がっている。ワクチン接種などの対策が実施されている。

● 蝿蛆症 メキシコ
Summary
メキシコで新世界ラセンウジバエが確認され、(米国)南部の港湾からの家畜の輸入がただちに停止されている。The USDA とメキシコが協力して対応している。

● アフリカ豚熱 ベトナム (QUANG NGAI) 
Summary
An outbreak of African swine fever has been identified in Quang Ngai, prompting local authorities to take emergency measures.