2025年9月26日

COVID-19 抗ヒスタミン剤点鼻による感染予防 CIDRAP
リフトバレー熱 セネガル

● COVID-19 点鼻スプレー

Summary
抗ヒスタミン薬の点鼻スプレーが COVID-19 感染予防となる可能性が示された。臨床試験で、スプレーにより感染が著しく減少したことが示された。
米国 CDC 委員会は、全国民へのワクチン接種推奨をやめ、個人の判断とすることを決めた。B型肝炎や MMRV ワクチンについても見直しを行っている。

[1] Antihistamine nasal spray prevents COVID-19, study finds
 情報源 Center for Infectious Disease Research and Policy (CIDRAP) 2025年9月3日
JAMA Internal Medicine(9月2日)掲載の、1施設でのランダム化コントロール試験の報告で、感染予防のために用いた点鼻スプレーの抗ヒスタミン薬 azelastine, an antihistamine nasal spray により、69%感染が減少した a 69% reduction of COVID-19 infection との結果が示された。Azelastine は季節性アレルギーの花粉症治療に広く使われている市販薬である。
"This clinical trial is the first to demonstrate a protective effect in a real-world setting," と、筆者のドイツの大学 Saarland University in Germany 教授が述べた。
この臨床試験の450人の参加者らは2グループに分けられた: The treatment group (227) は56日間1日3回の点鼻 an azelastine nasal spray を行い、 the control group の223 participants はプラセボスプレー a placebo spray を行った。18歳から65歳までの参加者の平均年齢は33歳で、66%が女性であり、開始時に急性感染症の症状はなく、ウイルス迅速検査陰性 negative SARS-CoV-2 rapid antigen test results だった。
Three times as many people in the control group contracted COVID-19
フォローアップ期間中に、the azelastine group では 2.2%(5例)の SARS-CoV-2 感染が polymerase chain reaction (PCR) で確認されたのに対し、the placebo group では
 6.7% (15例) が確認された。すなわち、a 69% lower rate of COVID-19 (odds ratio, 0.31; 85% confidence interval, 0.11 to 0.87) となる。
COVID-19 感染例のうち、azelastine は感染するまでの期間の中央値が長く an increase in mean time to infection (31.2 days vs 19.5 days in the placebo group)、症状のある PCR で確定診断された感染症の全体数の減少 a reduction of the overall number of PCR-confirmed symptomatic infections (21 of treated 227 participants compared to 49 of 223 participants) が認められた。
Azelastine はまた、Treatment group のライノウイルス感染症 rhinovirus infections in the treatment group も減少させた。56日間のフォローアップ期間中、1.8% a rhinovirus infection in the treatment group, compared to 6.3% in the placebo group だった、
Adverse events were comparable in the 2 groups(2群の副作用は同等)
In a commentary on the study in the same journal [JAMA]

原著タイトル Azelastine Nasal Spray for Prevention of SARS-CoV-2 Infections: A Phase 2 Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2025.
[2] US CDC panel declines to recommend COVID-19 shot for all Americans
 情報源 WRDW-TV News 12 2025年9月19日

○ リフトバレー熱 セネガル

Summary
the Saint-Louis region of Senegal において9月25日までに7例のリフトバレー熱患者  confirmed human cases of Rift Valley fever が報告され、うち4例が死亡し、異常に高い致死率となっている。この人獣共通感染症は蚊族または感染動物との接触により感染が広がる。致死率が高いことから、確認できていない感染例の存在があり、地域内の感染拡大のおそれがある。

the Saint-Louis region のリフトバレー熱アウトブレイク、死亡4例を含む7例:情報提供依頼
Key findings
・25 Sep 2025 現在、the Saint-Louis region of Senegal でリフトバレー熱アウトブレイク a Rift Valley fever (RVF) outbreak with seven cases, including four deaths が宣言されている。

○ カルバペネム耐性エンテロバクター 米国

Summary
2019年から2023年までの間に、NDM 産生カルバペネム耐性エンテロバクター感染症 NDM-producing carbapenem-resistant Enterobacterales (NDM-CRE) infections が急増(460%以上)したと、2025年9月に米国 CDC が報告した。
[* NDM New Delhi metallo-β-lactamase]

Alarming over 460% increase in infections caused by NDM-producing carbapenem-resistant Enterobacterales in the USA from 2019 to 2023, with implications for diagnosis and treatment
Key findings
the Annals of Internal Medicine 掲載の the US CDC の新たな報告によると、from 2019 to 2023 の間にカルバペネム耐性エンテロバクター感染症 infections with NDM-producing carbapenem-resistant Enterobacterales (NDM-CRE) の 460% を超える増加がみられた。
・年齢調整後 Age-adjusted incidence of all carbapenemase-producing CRE (CP-CRE) でも 69% from 2019 to 2023 の増加があり、NDM-CRE がその主役 the main driver であることに変わりない。
・The incidence of OXA-48-like CRE も増加し、KPC-CRE rates は当初は減少がみられたが2023年までに2019年レベルに戻っている。
・2023年の時点で、NDM は 27% of carbapenem-resistant E. coli(大腸菌), 24% of carbapenem-resistant Klebsiella species(クレブシエラ属), and 6% of carbapenem-resistant Enterobacter species(エンテロバクター属)で認められている。
・NDM-CRE infections は特に治療困難で、抗生物質の選択肢は狭く、有病率、致死率とも効率となる。
 情報源 CDC Newsroom 2025年9月23日
CDC Report Finds Sharp Rise in Dangerous Drug-Resistant Bacteria

● エボラウイルス病 コンゴ民主共和国 (KASAÏ) 
Summary
the Kasaï Province に限局しているエボラ・アウトブレイクは勢いが衰えているが、依然として懸念すべき状況にある。WHO は監視を継続するよう求めている。

● 旋毛虫症 アルゼンチン (BUENOS AIRES)
Summary
Dolores において旋毛虫症 Trichinellosis cases が確認され、感染源と疑われた精肉店が営業を停止している。一部の動物の体内に存在する寄生虫が原因となり、加熱不十分な肉の摂取により感染する。発熱、筋肉痛、消化器症状などを発症する。

● ブルセラ症 スロベニア
Summary
整形外科手術中の外科医が、患者からブルセラ症 brucellosis に゙感染した疑いがある。この患者は複数回の手術を受けており、術後に外科医が発症した。検査により、患者と外科医双方のブルセラ菌が確認されており、遺伝子解析で初回手術時に感染が伝播された可能性が高い。

● ロッキー山紅斑熱 ブラジル (MINAS GERAIS) 
Summary
The city of Caeté では紅斑熱による死亡が発生したことを受け、180日間の公衆衛生上の緊急事態を宣言した。

● 食中毒 インドネシア
Summary
無料給食プログラムは現政権の目玉政策であるが、相次ぐ集団食中毒により見直しが必要となっている。

● サルモネラ感染症 カナダ 
Summary
ピスタチオ食品が関係するサルモネラ感染症アウトブレイクによる患者の報告が増加している。食品監視当局が、certain brands of pistachio kernels(豆?), baklava(トルコの焼き菓子), ice cream, and chocolate などのリコールを発表している。特定のチョコレートを中心に調査が行われている。症状として、発熱、悪寒、嘔気、下痢、嘔吐、胃痛、頭痛などがある。

● レジオネラ症 フランス (AUVERGNE-RHONE-ALPES)
Summary
東部のレジオネラ肺炎アウトブレイクにより複数の死者が発生している。

● 腸チフス 米国 (NEW YORK) 
Summary
小学校 Guilderland Elementary School の生徒1名が、腸チフスtyphoid fever 検査で陽性と確認されたが、回復し退院している。学校によると、他の感染例は確認されていない。米国内ではまれな細菌感染症で、海外旅行に関係することが多い。発熱、頭痛、腹痛などの症状がみみられる。

○ 麻疹 イスラエル
Summary
4月の流行開始以降、9月25日までにイスラエルは1251例を超える麻疹を報告しており、うち5例が死亡した。ワクチンの接種率が不十分なコミュニティを中心にアウトブレイクが発生している。

イスラエルで5例目の麻疹による死亡例発生、先週発生の3例はすべて2.5歳未満の幼児
Key findings
・保健省 The Israeli Ministry of Health から、ワクチンを接種していない幼児の麻疹による死亡例が9月25日報告され、アウトブレイク開始以来5例目の死亡例となった。今回の症例を含む3例の死亡が先週発生し、すべて2.5歳未満の幼児である。
・13ヶ月の乳児は重症呼吸不全となり、小児 ICU で ECMO (extracorporeal membrane oxygenation) が装着されている。麻疹による二次合併症として多臓器不全となっている。
・この患児は(これまで)定期接種を受けていたが、麻疹ワクチンの接種推奨年齢に達する前の生後11か月に感染した。
 ・今回の最新の症例の2日前に、ワクチンを接種していない16ヶ月の男児が麻疹で死亡している。
・現在、21例の麻疹患者が入院中であるが、そのほとんどがワクチンを接種していない6歳以下の幼児であり、うち6例が集中治療室に入院している。
 情報源 Ministry of Health 2025年9月25日
Death of Unvaccinated Toddler from Measles in Jerusalem

○ ペスト 米国
Summary
US CDC: 
過去数十年間、米国内で毎年平均7例のペスト患者(0−17例)が報告されており、80%以上が腺ペストの患者である。主にニューメキシコ州北部、アリゾナ州北部、コロラド州南部の患者で、カリフォルニア州、オレゴン州南部、ネバダ州西端でも確認されている。

ニューメキシコ州の77歳男性のペスト感染報告、2025年州内2例目
Key findings
・ニューメキシコ州保健当局 The New Mexico Department of Health (NMDOH) から Bernalillo County の77歳男性のペスト感染例が報告、2025年の同州2例目の患者となった。
・患者は入院後回復し、退院している。2025年、州内でペストによる死亡は発生していない。
・原因となる細菌のペスト菌 Yersinia pestis は、感染性ノミの刺咬と感染動物、特にげっ歯類、野生動物、ペットとの接触により伝播され、ニューメキシコ州全域の野生のげっ歯類とそのノミに多くみられる。
 情報源 the New Mexico Department of Health2025年9月24日
Plague case reported in Bernalillo County

○ アフリカ豚熱 クロアチア
Summary
Osijek-Baranja County, Croatia において複数のアフリカ豚熱アウトブレイクが確認され、ブタおよび野生のイノシシが感染している。

Outbreaks of African swine fever confirmed in domestic pigs and wild boars in Osijek-Baranja County, Croatia
 情報源 Reuters 2025年9月23日
Croatia to cull thousands of pigs to combat swine fever crisis