2025年8月29日

ポリオ パプアニューギニア WHO
ベネズエラ・ウマ脳炎 ブラジル
エムポックス WHO
ダニ媒介性脳炎 スウェーデン

◯ ポリオ パプアニューギニア
Key Findings
パプア・ニューギニア保健当局は WHO などの協力を得て、国内で初めてとなるポリオ感染例 the first human case of paralytic poliomyelitis (cVDPV2) を確認した。
West Takara, Lae, Morobe Province のワクチンを接種していなかった4歳男児で、急性弛緩性麻痺を発症した。アウトブレイクの状況が、環境中での確認から小児が感染する直接的な影響に変化した。

 情報源 WHO 2025年8月28日
政府保健当局 The National Department of Health (NDoH) は、the World Health Organization (WHO) and partners の協力を得て、パプアニューギニア初のポリオ感染例 the first human case of paralytic poliomyelitis (cVDPV2) in Papua New Guinea を確認した。Lae, Morobe Province のワクチンを接種されていなかった4歳男児で、急性弛緩性麻痺を発症していた。
環境中でのウイルス確認にとどまっていたものが、小児に対する直接的な影響が確認されたことで、同国のポリオ対応の転機となった。8月11日に全国的な追加接種活動 a nationwide Supplementary Immunization Activity (SIA) が開始され、10歳未満の小児を対象に新型経口ワクチン the novel oral polio vaccine (nOPV2) が用いられている。5 September まで期間が延長され、 地域当局は the critical 95% coverage target の達成を目指している。8月26日現在のカバー率 41.2% にとどまるが、もっとも進んでいるのは Hela Province leading at 91% となっている。第2ラウンド A second round of SIA is scheduled from 29 September to 17 October では、経口ワクチン nOPV2 と不活化ワクチン Inactivated Polio Vaccine (IPV) を併用することで、より強力で持続性の長い防御が与えられる。
122例の急性弛緩性麻痺の症例 cases of Acute Flaccid Paralysis (AFP)、 an important indicator of active surveillance が報告されており、93例が検査が行われポリオウイルス陰性 negative for cVDPV2 が確認されている。

◯● ベネズエラウマ脳炎 ブラジル
Key findings
2025年7月、Tabatinga, Amazonas, Brazil において3例のベネズエラウマ脳炎 confirmed cases of Venezuelan equine encephalitis virus (VEEV) (subtype ID) が確認され、3か国が国境を接するこの地域 this tri-border region において、2025年初のヒトの観戦報告となった。男性2名と女性1名の、いずれも都市部の住民 residents of the Tabatinga urban area で、発症から3−5日後に受診した。いずれも頭痛、筋肉痛、関節痛などの非特異的な急性発熱性疾患の症状がみられ; 2名の患者で白血球減少症と血小板数減少がみられたが、神経侵襲型の症状はみられなかった。
リアルタイム PCR real-time RT-PCR (reverse transcription polymerase chain reaction) 遺伝子解析 genetic sequencing technology developed by Oswaldo Cruz Foundation (Fiocruz) で確定診断され、サイクル閾値 cycle threshold values of 35.7, 36.5, and 38.4 であったことから、少ないウイルス量 low viral loads と考えられた。
All three patients fully recovered without sequelae by the 28-day follow-up, demonstrating the generally mild course of VEEV infections.

ブラジル (AMAZONAS)
Summary
Tabatinga, Brazil において、3人のベネズエラウマ脳炎 Venezuelan equine encephalitis 感染が確認されている。蚊族が媒介するウイルス感染症で、ヒトとウマが感染する。 ウイルスの同定に用いられる新たな技術を開発した the Oswaldo Cruz Foundation (Fiocruz) が発生状況をモニターしている。脳炎や様々な後遺症を残すこともあるが、多くの患者は軽症である。
In Tabatinga, Brazil, three people have been diagnosed with Venezuelan equine encephalitis, a mosquito-borne viral disease that affects both humans and horses. The cases were confirmed by the Oswaldo Cruz Foundation (Fiocruz), which is monitoring the situation. The virus was identified using advanced technology developed by Fiocruz. While the disease can cause brain inflammation and lead to various after-effects, most cases result in a mild illness. Fiocruz's research network, initially created to study COVID-19, is now focused on gathering data on viruses to improve diagnostics and vaccine development.

 情報源 Em Tempo [in Portuguese] 2025年8月27日
the city of Tabatinga (AM), Alto Solimões region において今年、(ブラジル国内で)はじめて3人 (2 men and one woman) がベネズエラ馬脳炎 Venezuelan equine encephalitis と診断された。8月26日 the Oswaldo Cruz Foundation (Fiocruz) が明らかにした。the Unified Health System (SUS) 下で監視されていると発表された。
今回の症例は the FrontFever study team によりウイルス遺伝子が確認されたもので、今月 [8月] 学会で発表された。
Tabatinga (AM) is located in the triple border region with Colombia and Peru(コロンビアとペルーとの国境)。
the Leônidas and Maria Deane Institute 研究所の研究者によると、今回の症例は real-time PCR technology, developed at Fiocruz により確認され、genetic sequencing で確定された。
"the Brazilian Amazon の原因不明の急性熱性疾患の原因がこのウイルスによることを突き止めた" と説明されている。
専門家によるとベネズエラ馬脳炎は、蚊族が伝播するアルファウイルスの1種を原因とするウイルス感染症で、ヒトにもウマにも感染する。
Sequelae
脳炎の原因となることもあるこの疾患では、様々な後遺症を残すこともあり、感染症の重症度や病変の部位による。運動、認知、行動、感情などの後遺症があり、生活の質に影響する。しかし、多くの患者は重症後遺症を残すことのない発熱性疾患となる。

◯ エムポックス WHO
Key Findings
世界の発生状況 Global circulation: All mpox virus (MPXV) clades の感染循環が複数の国で続いており、アウトブレイクの速やかな封じ込めが行われない場合リスクが持続する。
新たな確認 New detections: 
セネガルがはじめての症例を報告; トルコがはじめて clade Ib cases を報告; コンゴ民主共和国が its first clade IIb cases を報告。
症例数: 
In July 2025, 47 countries across five WHO regions reported 3924 confirmed cases and 30 deaths (CFR 0.8%).
地域別の発生傾向 Regional trends: 
西太平洋地域 the Western Pacific (notably 中国 China and フィリピン the Philippines) と東南アジア South-East Asia で増加。一方、the African, European, and Americas regions の報告は減少。
アフリカ地域 Africa: 
From Jan–Aug 2025, 23 countries reported 3万1316 cases and 136 deaths (CFR 0.4%). 
21カ国で感染が継続しているが、DRC, Sierra Leone, and Uganda. Kenya において減少しているため減少傾向。ただし、コミュニティ内感染拡大を伴う確定診断例が徐々に増加している。
 情報源 WHO 2025年8月28日

● ダニ媒介性脳炎 スウェーデン
Summary
スウェーデン国内のダニ媒介性髄膜炎の感染例が、近年に比べて増加しており、専門家は、気候変動によりダニの活動期間が延長したことと、アウトドア活動が増えたことが原因である可能性があるとしている。

 情報源 Sweden Herald 2025年8月19日
2024年の1年間に、384人 Swedes がダニ媒介性脳炎 TBE or tick-borne meningitis に罹患した。
2025年はすでに半年を経過したが、公衆衛生当局 the Public Health Agency には 269例 registered cases が登録されている。
"近年に比べて高いレベル a higher level than in recent years" と Caroline Schonning, investigator at the Public Health Agency が説明している。
Climate a factor
なぜスウェーデンの TBE 患者が増えている more and more Swedes are infected with TBE に対して答えることは難しいと説明された。1つの要因は気候かも知れない。1年間のうち、以前より長い期間暖かいことで、ダニシーズンが長期化している。同時に気温が高い夏により多くの人々が自然の中で野外活動を行っている。感染してもほとんど症状がない場合もあり、このような感染例についてはほとんどわかっていない。発症し、一旦回復したあとふたたび体調が悪化すると、かなり重症となりうる。神経系を冒すことのあるとても危険な疾患と説明されている。
主な症状は、発熱、激しい頭痛、嘔吐、光線過敏、項部硬直、集中力障害などである。ウイルスが脳に及ぶことがあり、中枢神経系を冒すと麻痺、人格変容やより重症例では死に至ることもある。
スウェーデン国内では毎年約10例の TBE による死亡例が発生していると、the Social Insurance Agency's cause of death register で示されている。
"Remove them"
TBE に対するワクチンがあるが、それ以外に身体に注意を払うことが病気の予防の中心となる。
"もし、長袖長ズボンを着ないで自然の中でアウトドア活動を行った場合、身体にダニが付いていないか確かめることがとても重要である。もしダニが付いていたら、蠢いていても、固着していても、ただちに取り除くことが必要である。それが一番である。
ダニは刺咬して吸血する。ダニ刺咬そのものは問題となることはないが、ダニから TBE やボレリア症 borreliosis, ダニ熱 tick fever (アナプラズマ症、anaplasmosis) に感染するおそれがある。
感染対策局 The regions' infection control units は tick-dense areas の滞在する場合のワクチン接種を勧めている。
The entire Vastra Gotaland, Ostergotland, Sodermanland, Stockholm, and Varmland counties are considered risk areas, and a total of 173 of the country's 290 municipalities are classified as risk areas, based on confirmed cases of disease.
The mapping that SVA, the National Veterinary Institute, does in collaboration with Uppsala University can specify where the disease-carrying ticks are found.

◯ ノミ媒介性チフス 米国
FBT Flea-borne typhus (sometimes called murine typhus) Data
 情報源 Department of Public Health 2025年8月28日
ロサンゼルスLA County において、2010年以降 FBT の増加が続いており、2024年に a record-high 187 cases が報告された。このチフス患者の増加は、郡内の広い範囲 throughout the County で観察されているが、限局性クラスター localized clusters とアウトブレイク が確認されているのは主に Central Los Angeles and South Los Angeles areas である。FBT cases は通年発生するが、晩夏から秋の時期にピークとなる。
For more detailed information, visit the LA County Acute Communicable Disease Control Disease Surveillance Data Dashboard:

●◯ デング熱 インド (HARYANA) 、フィリピン
インド
Summary
Haryana 州において最近、デング熱の増加が確認されており、当局は病院と検査機関に報告義務を課し、検査費用の規制するなどの対策を実施している。

フィリピン
Key findings
・Quezon City from 01 Jan to 26 Aug 2025 で、合計7172 dengue cases and 24 deaths が報告され、2024年同期比 a 143% increase となっている。
・10歳以下の小児が最も多い3549例、次いで those aged 11–20 years (2051 cases), 21–30 years (781 cases), and 31 years and older (791 cases であった。
・半数近くが平均年齢11歳の就学児。
・大半が人口密集地域 densely populated areas such as Batasan Hills, Payatas, Commonwealth, Holy Spirit, Pasong Tamo, Bagong Silangan, and Tatalon において感染している。

● レジオネラ症 米国 (NEW YORK CITY) 
Summary
Harlem におけるレジオネラ肺炎アウトブレイクにより複数の死者が発生している。当局の調査により感染源として冷却塔の関与が確認されている。

● 原発性アメーバ性髄膜脳炎 インド (KERALA)
Summary
ケララ州の患者1名で、まれな種類のアメーバ A rare amoeba variant, Sappinia pedata が確認され、州内では初めての感染例となった。水の塩素消毒の強化などが行われている。

● 麻疹 イスラエル
Summary
過去3か月間に多数の麻疹が確認されたと保健省が発表した。曝露したおそれがある場合、ワクチン接種歴を確認するよう呼びかけている。

● コレラ チャド(2)
 (SILA)
Summary
the Sila province においてコレラ・アウトブレイクが発生した。

 (OUADDAI)
Summary
the Ouaddaï province of Chad におけるコレラ・アウトブレイク発生により、公衆衛生当局  the Ministry of Public Health and Prevention が緊急の対応に追われている。ワクチン接種キャンペーンに関する文書の完了を急いでいる。

● ロッキー山紅斑熱 ブラジル (SAO PAULO)
Summary
Campinas, Brazil において2025年に報告された紅斑熱の症例はすべて死亡した。市保健当局が感染による4例の死亡例について報告した。

● ビブリオ・バルニフィカス感染症 米国(2)
 (FLORIDA) 
Summary
フロリダ州において、新たなビブリオ・バルニフィカス感染症の症例が報告された。 "flesh-eating(肉食)" と表現されることもあるこの細菌は、水温の高い汽水中で確認される。汚染されたシーフードの摂取や開放創が水に曝露することで感染する。

 (LOUISIANA)
Summary
ルイジアナ州で採取されたカキの摂取が関係する肉食バクテリアによる、新たな2例の死亡が報告された。保健当局は、今年の症例増加を指摘しており、平均の年間発生率を上回っている。水温の高い水に生息する菌で、開放創や生のシーフードの摂取により感染する。一部の持病があると悪化する可能性がある。
(参考情報)WBRZ 2025年8月27日

● サルモネラ感染症, SEROTYPE ENTERITIDIS 米国
Summary
複数州にまたがるサルモネラ感染症アウトブレイクの調査が行われている。疫学データでは、特定の業者が販売した鶏卵の汚染があり、疾患に関連したことが示唆されており、鶏卵の回収が開始されている。

● 百日咳 レユニオン
Summary
レユニオン島で、感染力の強い呼吸器感染症の百日咳が増加している。保健当局はワクチン接種が最良の感染予防策であることを強調している。すべての島民にワクチンが推奨されており、乳児、妊娠女性、異なる年齢での追加接種や乳児との接触者への接種なども含む成人のそれぞれに対するガイドラインが提供されている。

● マラリア 米国 (VIRGINIA) 
Summary
ニュースのアンカー A Fox News anchor が、重症マラリア感染のためしばらく出演を控えると発表した。

● A型肝炎 ノルウェー
Summary
A型肝炎アウトブレイクに関係していたあるレストランが営業を再開した。保健当局が、複数の患者が発生したアウトブレイクの感染源を調査している。レストランは、従業員のワクチン接種、消毒作業などの感染対策を行った上で営業を再開した。

● レジオネラ症 英国 (SCOTLAND)
Summary
スコットランドのレジオネラ肺炎感染例が近年著しく増加している。2021年以降増加が継続しており、2024年はアウトブレイクが確認されていないにもかかわらず、1年間で最多の感染者数を記録した。2024年の感染例の大部分が渡航に関連していた。

● 胃腸炎 ギリシャ (AEGEAN) 
Summary
ギリシャのある島で胃腸炎アウトブレイクが発生しており、住民や観光客らに不安が拡がっている。保健当局の調査で、ウイルス性が疑われている。

◯ 病原性大腸菌 ドイツ、ベルギー
ドイツ
Summary
Mecklenburg-Western-Pomerania, Germany において、小児を中心とする大腸菌感染症クラスターA cluster of EHEC/STEC infections が報告されており、6人が溶血性尿毒症症候群を発症した。感染源は特定されていない。例年、州内で報告される HUS の症例は年間1ないし2例である。

ベルギー
Summary
2025年8月18日にはじまった、腸管出血性大腸菌 EHEC/志賀毒素産生大腸菌 STEC アウトブレイクの調査が行われており、across Leuven, Aalst, and Antwerp にある6か所の高齢者施設  six retirement homes において20例以上の患者が発生している。高齢者5人が死亡し、アウトブレイクとの関連が疑われている。共通の食品が感染源とみられているが、特定されていない。

● 原因不明の死亡、ウシ インド (PUNJAB)
Summary
乳業コンプレックスの通りにウシの死体が積み上げられている。業者の要求にもかかわらず、当局は死体の搬送が行っていない。農業従事者は、廃棄スペースの不足が原因で、現存の施設が閉鎖されているためと説明している。

● ボツリヌス症、鳥類 フランス (BRITTANY) 
Summary
the Morbihan region において死亡して発見された鳥類のボツリヌス症が確認された。

● 狂犬病 インドネシア (NORTH SUMATRA) 
Summary
狂犬病感染例の報告が増加していることを受け、狂犬病ワクチン接種活動を強化している。ペットへの一斉接種を行い、使用状況をモニターしている。

● アフリカ豚熱 ベトナム (TUYEN QUANG) 
Summary
Five communes in Tuyen Quang province は、3週間以上新たなアウトブレイクの発生がなく、アフリカ豚熱の封じ込めに成功した。

● 豚熱 日本
Summary
This is a follow-up report regarding the recurrence of a previously eradicated disease in Japan. The disease is ongoing and is affecting areas within the country.

● 小反芻獣疫 コンゴ民主共和国 (ITURI)
Summary
Ituri province では、感染力の強い疾患により、大きなヤギの損失を生じている。ワクチンがなく、感染動物の取り扱いが不適切であることから、事態は深刻である。