カンジダ (C. auris) 症 欧州
○ カンジダ (C. auris) 症 欧州
Summary
欧州圏内で2013年から2023年までの期間に、4000例を超えるカンジダ症 cases of Candidozyma auris (formally C. auris) が報告されており、このうち2023年だけで1346例が報告された。この多剤耐性真菌は病院内で急速に感染が拡大し、複数の国ですでに常在化している。
欧州・病院内における Candidozyma auris 感染症増加が継続、米国の傾向を反映
Key findings
・Candidozyma auris (formerly Candida auris) の欧州内での急速な感染拡大が続いていると、9月11日に発行されたサーベイランス 第4版 The fourth survey by the European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC) の中で報告された。
・C. auris は多剤耐性真菌で、医療現場で感染拡大があり、環境面や医療器具に残存するため感染コントロールが難しい。
・Between 2013 and 2023 の期間に合計4012 cases in European Union (EU)/European Economic Area (EEA) countries に報告され、トルコを中心に an additional 121 cases in enlargement countries, mainly Türkiye が加わった。
・2023年の1年間だけで、最多年間報告数となる1346 cases in 18 EU/EEA countries が報告された。
・スペイン、ギリシャ、イタリア、ルーマニア、ドイツの累積患者数が最も多く、うち数か国では常在化している。キプロス、フランス、ドイツでは Distinct transmission events も確認されている。
・2014年に、欧州圏内でははじめてフランスにおいて発生が確認され、続いて2017年からの初期の感染増加が2020年まで継続した。5から7年間で弧発から常在へのシフト the shift from isolated detections to regional endemicity が起こっている。
・もっとも感染しやすいグループは入院中の重症患者、特に集中治療室内、高齢者、免疫不全の患者である。
・血流感染の致死率は29％から62％との研究がある。
情報源 European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC) 2025年9月11日
Survey on the epidemiological situation, laboratory capacity and preparedness for Candidozyma (Candida) auris, 2024
○ ボレアルポックス・ウイルス borealpox virus 米国
アラスカ州で2020年〜2023年に6例のボレアルポックス・ウイルス感染例確認、免疫不全の死亡1例
Key findings
・2020年から2023年までの間に、アラスカ Alaska 州で6例のヒトのボレアルポックス・ウイルス感染例 confirmed human cases of borealpox virus infection が、 the Interior and Kenai Peninsula regions において確認されている。
・5例は軽症で自然治癒したが、免疫不全のある1例は重症化し、2024年1月に死亡した。
・いずれの患者も病変と症状 lesions plus constitutional symptoms があり、一部の患者にはリンパ節腫脹、発熱、倦怠感、胃腸症状または関節症状が見られた。
・ヒト－ヒト感染伝播の証拠は確認されておらず、northern red-backed vole などの小型ほ乳類からの感染溢出 spillover による。
・検査および系統発生解析で人獣共通感染伝播と確認され、複数の野生の小型ほ乳類と2頭のペットのイヌで、ウイルス遺伝子 borealpox virus DNA と抗体が確認されている。
・ヒトの感染例はいずれも夏季または初秋に発生しており、動物の活動のピーク時期 peak vole activity に一致する。
・Borealpox は現時点でアラスカ州に限局しており endemic to Alaska、これ以外からの報告はない。
・患者のうちの1例が痘瘡ワクチンの接種歴 Smallpox vaccination history を報告しているが、borealpox infection に対する交叉免疫については不明である。
情報源 Clinical Infectious Diseases 2025年9月8日
Six Cases of Borealpox and Evidence of a Zoonotic Source—Alaska, 2020–2023
Abstract
Background
Borealpox virus (previously known as Alaskapox virus) はオルソポックスウイルスの1種 an Orthopoxvirus species で、2015年にアラスカ州 near Fairbanks, Alaska の住民ではじめて報告された; この症例の感染源は不明である。2023年までに6例が確認されている。
Methods
6例の患者に対して渡航歴と可能性のある曝露歴の聞き取りを行い、小型ほ乳類を捕獲してオルソポックスウイルス検査とウイルス遺伝子の系統発生解析 a phylogenetic analysis of viral DNA sequences を行った。
Results
5人の患者は類似する臨床症状で、すくなくとも1か所の病変 lesion と、多くの患者でリンパ節腫脹が認められた。免疫低下のある1例は重症となり、入院後 investigational orthopoxvirus therapeutics が行われたが死亡した。1名の痘瘡ワクチン接種歴の自己申告 a self-reported prior history of smallpox vaccination があった。すべての患者について、アラスカ州外への渡航歴はなく、ヒト－ヒト感染の証拠も見られなかった。
複数種の小型ほ乳類で、ウイルス遺伝子 Borealpox virus DNA および過去の感染を示す抗体が確認された。
● 手足口病 米国 (TEXAS)
Summary
Hidalgo County において手足口病の増加に対する注意喚起が発出された。小児および成人のいずれにも感染し、感染力が強く、すべての症状が出そろう前の時期の感染力がもっとも強い。
● 超急性全ぶどう膜炎 ネパール: (GANDAKI)
Summary
視力を失うこともある、SHAPU という病名の季節性の眼の感染症が拡大している。チョウ（ガ？）の1種 a specific type of white butterfly との接触が関係し、the Pokhara area でもっとも多く見られ、2年ごとにモンスーン時期のあとに発生する傾向にある。眼の深刻な障害を予防するため、早期治療が重要である。チョウとの接触と夜間の屋外での活動を避け、明るい光源を減らし、就寝時に毛布を使用することが勧められている。
● リステリア症 米国、デンマーク
米国
Summary
新たなリステリア症アウトブレイクの調査が行われているが、まだ初期段階であり感染源は特定されていない。
デンマーク
Summary
当局がリステリア症アウトブレイクの調査を行っている。今回のアウトブレイクの原因菌は、過去にも国内で確認されている。調理済み食品のリステリア症対策として、新たな欧州規則では、食品内に菌が存在しない、もしくは消費期限内は閾値以下であることの、製造者による確認が求められている。
○● 百日咳 日本(2)、ペルー
日本
Summary
日本において、近年でもっとも深刻な百日咳アウトブレイクが発生し、広範囲に感染が拡大して8月30日の時点で累積7万2488例が報告されている。
日本の百日咳、累積7万2448例 全都道府県で感染継続
Key findings
・国内の百日咳累積患者数は 5万2 490 (as of 20 Jul 2025) から 72 448 (as of 30 Aug 2025) に、6週間でおよそ2万例近い増加がみられた。
・全国47都道府県で感染が確認されており、もっとも患者数が集中しているのは東京 (5846), 埼玉 (3857), 新潟 (3496) である。
・直近の the most recent morbidity week (Week 35) においても、週あたり2258例の新規感染例が報告され、高い状態が続いている。
情報源 JIHS 2025年9月16日
情報源 NHK 2025年9月16日 access
Summary
2025年、日本では記録破りの百日咳アウトブレイクが発生し、全国から感染例が報告されている。対策として、乳幼児への定期予防接種と、リスクがある場合は前倒しで接種 pre-arrival vaccination するよう勧めている。米国も感染増に対応しているが、最近のデータでは減少傾向にある。日本へ旅行する場合、DTP を含めたワクチン接種状況を最新のものとするよう勧められている。
ペルー (LORETO)
Summary
Datem del Marañón, a region in Peru において、百日咳アウトブレイクにより保健衛生上の緊急事態宣言が求められている。感染および死亡の著しい増加があるにも関わらず、少数民族の首長からの要求に保健省は対応していない。
○ レジオネラ症 米国(2)
Summary
This event folder lists clusters and outbreaks of Legionnaires’ disease across the United States.
アイオワ州のレジオネラ肺炎54例に増加：冷却塔が感染源か
Key findings
・2025年8月以降、44例のレジオネラ肺炎 confirmed cases of Legionnaires’ disease がアイオワ州の郡 Marshall County, Iowa で報告されている。
・今回のクラスターは、9月4日にはじめて18例の感染が報告され、9月15日までに44例に増加した。1例の a retired priest の死亡が9月14日に報告された。
・感染源として a cooling tower が疑われている; 地域内の包括的調査が実施されている comprehensive environmental testing of all cooling towers in the Marshalltown area is underway.
・クラスターは Marshall County 内に限局しているようにみえる。
・50歳超、男性、喫煙者、免疫不全などがハイリスクとなる。
情報源 Iowa Health & Human Services 2025年9月15日 access
north central Marshalltown, Iowa の住民らのレジオネラ肺炎クラスター a cluster of Legionnaires’ disease cases among individuals について、各局 The Iowa Department of Health and Human Services (Iowa HHS) and Marshall County Public Health Department in consultation with the CDC による調査が行われている
2025年8月以降、54例 cases of legionella in Marshall County が確認されており、1例のレジオネラ菌関連の死亡が報告されている。
Summary
Marshall County のレジオネラ肺炎の患者数が増加した。
● インフルエンザ インド (DELHI) H3N2
Summary
Delhi において最近、インフルエンザ感染例の増加があり、the H3N2 subtype of influenza A が大部分を占めることが確認されている。
● Q熱 オーストラリア (SOUTH AUSTRALIA)
Summary
Q熱感染例が増加していることを受け、畜産業関係者らに対し予防策を実施するよう呼びかけられている。動物からヒトに感染する細菌が原因となる疾患で、深刻で長期間の健康上の問題が生じるおそれがある。多くの場合感染しても症状が現れないが、一部がインフルエンザ様症状やより重い合併症を発症する。ハイリスクの人々にワクチン接種が勧められ、同時にマスクの着用や衛生手順の遵守が求められている。
● サルモネラ感染症 スウェーデン (SODERMANLAND)
Summary
スウェーデン国内の複数の介護施設でサルモネラ感染症アウトブレイクが発生し、当局が感染源の調査を行っている。
● ダニ媒介性脳炎、ボレリア症 ロシア (BASHKORTOSTAN)
Summary
Bashkiria において、ダニ媒介性脳炎とダニ媒介性ボレリア症が報告されている。気温がさがるにつれ、同疾患を保有するげっ歯類からヒトへの感染リスクが高まることが懸念されている。特に秋に木の多い地域を訪れる場合は、ダニの感染リスクへの注意を怠らないよう呼びかけられている。
○ ポリオ パキスタン
Summary
パキスタンは、現在も野生株ポリオウイルスが常在する2か国の１つで、予防接種の努力にもかかわらず、接近が困難な地域は特に感染リスクが高い。
いずれも Khyber Pakhtunkhwa 州の新たな2例の感染報告、2025年合計26例
Key findings
・新たに2例の野生株1型ポリオウイルス感染 new wild poliovirus type 1 (WPV1) cases が southern Khyber Pakhtunkhwa (KP), specifically in Lakki Marwat (Suleman Khel) and North Waziristan (Mir Ali) において確認された。いずれも生後11か月と19か月の乳幼児である。
・2025年、国内のポリオ感染例は合計26例となり、18 cases in KP, six in Sindh, and one each in Punjab and Gilgit-Baltistan である。
・8月の環境中ポリオウイルスサーベイランスでは、51 out of 126 sewage samples（下水サンプル） countrywide; ten of 34 samples in KP が陽性だった。
・パキスタンとアフガニスタンは、最後に残されたポリオ常在国である。
・治安、ワクチン忌避、接近が困難な地域 hard-to-reach communities など、根絶への課題がある。
○ ハンタウイルス ウクライナ
Summary
Between September 8–13, 2025、ウクライナ南部のロシア兵 among Russian “Akhmat” unit soldiers の間で、3例のハンタウイルス腎症候性出血熱 suspected cases of hantavirus HFRS が発生したとメディアが伝えているが、確定診断や予後のデータは示されていない。げっ歯類が営巣する塹壕の兵士らは感染リスクにさらされており、過去にはレプトスピラ症などの他のげっ歯類による疾患アウトブレイクも報告されている。
情報提供依頼：ウクライナ国内のロシア軍兵士の間で、3例のハンタウイルス腎症候性出血熱
Key findings
・Between Sept 08–13, 2025, three cases of suspected hantavirus hemorrhagic fever with renal syndrome (HFRS) among Russian military personnel, specifically within the “Akhmat” unit operating in southern Ukraine についてロシアおよび海外メディアが報じている。
・この情報について、他の情報源による確証は得られていない。
● B型肝炎 米国): (FLORIDA)
Summary
フロリダ州では、感染が増加しているにも関わらず、新生児に対する B型肝炎ワクチンが任意接種となった。
● ビートの病気、LETTUCE INFECTIOUS YELLOWS VIRUS スペイン
Summary
In 2025, Lettuce infectious yellows virus (LIYV) was detected in a crop of Beta vulgaris grown in a greenhouse. The plants displayed virus-like symptoms.
○ アフリカ豚熱 韓国
Summary
On 14 Sep 2025, Republic of Korea confirmed its fifth ASF outbreak of the year at a Yeoncheon pig farm, Gyeonggi Province.
○ 高病原性鳥インフルエンザ 韓国
Summary
On 13 Sep 2025, the Republic of Korea reported its first HPAI (H5N1) outbreak of the season at a poultry farm in Paju, Gyeonggi Province, occurring earlier than usual. Authorities raised the national alert level to “Caution” and implemented control measures. No human cases have been reported.