ロボア症(ロボ病) ブラジル EID
● ロボア症(ロボ病) ブラジル (ACRE)
Summary
Jorge Lobo's disease (JLD) は、主にアマゾン盆地 the Amazon Basin にみられる慢性真菌感染症で、皮膚の外傷から感染するほか、汚染のある植物や節足動物からの感染の可能性もある。外見上の醜形をきたし、治療されない場合は社会的孤立につながる可能性がある。小児の感染例の報告は少ないが、疾患の経過が長いことから幼いうちに感染している可能性がある。早期診断と、外科的手術と抗真菌薬治療による早期治療が、合併症予防に重要である。
情報源 Emerging Infectious Diseases(EID)2025年9月17日
原著タイトル Jorge Lobo's disease in child with tick exposure, Brazil. Emerg Infect Dis. 2025;31(10).
(ジョージ)ロボ病 Jorge Lobo's disease (JLD) は、培養不可能な真菌 the noncultivable fungus Paracoccidioides lobogeorgii (previously Lacazia loboi) による慢性感染症で、基本的に the Amazon Basin and parts of Central America の住民が罹患し、ほとんどの報告例はブラジル Acre state in Brazil で発生している。
皮膚の創傷からの汚染のある植物や接触動物から直接の菌の注入によるほか、二次的な環境中の感染源からの移植などによる。
初期病変は小さな丘疹や結節で、耳や四肢に生じることが多く、疣贅性プラーク extensive verrucous plaques に拡大する。
環境からの感染仮説は、先住民 the Caiabi Indigenous population が常在地から非常在地に移住したことで、新たな感染例の発生が止まったことが根拠となっている。
JLD の感染は、農村部の作業や森林の切り出しに従事する男性に偏って発生している。
診断されないままであると、醜形 visible disfigurement、機能障害、心理的羞恥につながり、就職が困難となり、社会的な孤立の原因となる。
小児の感染例の報告は少ないが、疾患の経過が数十年にも及ぶほど長いことは、幼い時期に感染し、遅れて臨床的に気づかれるとの仮説を支持する。
今回、JLD に感染した男児の患者について報告する。
2018年2月、ブラジルの森林地帯 a forested area in Brasiléia, Acre state, Brazil に住む小児1名が、右耳の1か所の病変を主訴に皮膚科 the Serviço Estadual de Dermatologia do Acre (Rio Branco, Brazil) を受診した。母親はこの男児はを、たびたび森林の中の仕事場に連れて行き、2017年には2日間ダニが付着していた。
初期治療のステロイド外用薬 topical dexamethasone (1 mg/g) は効果なく、この病変は6か月間に、軽度の炎症から結節性病変に変化した。1年が経過した時点で医師は、耳の孤立性硬化性病変 a solitary indurated lesion on the ear (Figure 1, panel A) を根拠に JLD を疑った。
組織診断, revealing granulomatous inflammation with spherical, double-walled yeast cells in branching chains (Figure 1, panel B) and prominent histiocytes and multinucleated giant cells (Figure 1, panel C) により診断 the JLD diagnosis が確定された。
小児のハンセン病多剤併用治療 pediatric multidrug therapy for multibacillary leprosy に準じ: リファンピシン monthly doses of rifampin (300 mg), クロファミジン clofazimine (150 mg), and dapsone (= diaminodiphenyl sulfone; 50 mg) で開始後、combined with daily dapsone (50 mg) and clofazimine (50 mg on alternate days) for 2 years(2年間), and quarterly follow-up visits が投与された。4か月後に病変が縮小し外科切除が可能となった。
2020年11月までに lesion-free となり follow-up に訪れなくなった。
2022年8月、ハンセン病サーベイランスの中で during a health outreach mission for leprosy surveillance in the Amazon でこの患者が発見され、同側の耳の表面に小さな再発病変が確認、切除された。3か月間のイトラコナゾール Itraconazole (200 mg/d) が処方されたが、不定期受診となった。
2024年6月、同じ部位に a 5-cm lesion が再発し、生検により JLD recurrence showing chronic granulomatous dermatitis with multinucleated giant cells, fibrotic stroma, and yeast-like cells と確認された。itraconazole による治療継続と定期通院が続けられている。
JLD in children の報告は少ない underreported、一方、多数の症例は小児期の感染が起源となっていることが示唆されている。しばしば数十年間にも及ぶ JDL の進行については、常在地域での早期発見の必要性は明らかである。潜伏期間が長いことは、人生の早い時期に感染するとの仮説 the hypothesis of early-life acquisition を支持する。
この患者では、1年間治療が中断されたにもかかわらず緩徐な病変の変化であったことは、小児では臨床経過が緩徐であることを示唆する。適時に判断し、外科的治療と抗真菌薬治療の組み合わせを行うことで、合併症の予防につながる可能性がある。
JLD は組織球浸潤、多核巨細胞、真菌成分を伴う強い炎症反応が引き起こされ、線維性変化、慢性化、免疫封入 immune containment に進行する。
今回の症例については、接触動物による外傷と発症が関連するとの他の報告のように、ダニ刺咬により真菌が侵入した可能性がある。多くの試みにも関わらず、パラフィン埋包物の保存状態が悪く、分子学的確認 molecular confirmation (rDNA sequencing) は不成功となった。組織病理学的検査によって診断が確定した。
Brasiléia は western Acre state, Brazil, bordering Bolivia に位置する都市であり、ゴム栽培と抽出が盛んな the Brasiléia-Epitaciolândia-Xapuri immediate region に属することから、環境からの曝露が多いことが示唆される。
河川運搬による移動は季節性であることから、remote communities は年中ヘルスケアが滞っている; 雨季に道路が冠水し navigation が困難となり、一方水位が下がる乾季はボートが使えず移動に時間がかかる。
夏季の JLD 治療は経験的 empirical に行われ、標準的プロトコールは存在しない。
今回の症例は、再発をくり返し治療に対する部分的な反応がみられた9年間の臨床経過であり、小児期の森林への曝露についての成人症例の報告を反映しており、小児期の感染の診断が十分でないことが示唆された。
ハンセン病のための多剤併用療法 Polychemotherapy regimens used for multibacillary leprosy は、局所感染例 localized JLD cases に対する有効性が示されているが、しばしば長期間に治療が必要となる。今回の症例の治療は2年間続けられた後のフォローアップが不規則となった。成人のイトラコナゾール治療 Itraconazole regimens in adults の通常の治療期間 span は 12-24 months であるが、小児の治療に関するデータは乏しい。
対象地域でのフィールド調査 during a targeted field mission でこの症例が再発見されたことにより、早期発見、適時治療、管理を行って疾患による長期的な影響を低減するために、endemic forested areas に入って積極的にサーベイランスを行うことが必要であることが改めて示された。
Preference
● 原因不明の疾患 ナイジェリア・ルワンダから、アルゼンチン
ナイジェリア (FEDERAL CAPITAL TERRITORY) ex RWANDA,
Summary
32歳の不動産開発業者が、ウイルス性出血熱を発症したとみられている。発熱、鼻出血、吐血、血便が10日間続いている。ルワンダへの渡航歴があり、現地で治療を受けている。9月17日、Rwanda and Lagos から Abuja, Nigeria に戻った。Ebola and Marburg viruses の初期検査は陰性だった。
[1] 情報源 Whatsapp from a source known to ProMED 2025年9月8日
Suspected cross-border viral hemorrhagic fever (Ebola, Marburg, dengue, Lassa) case at Nisa Premier Hospital
Date of report: 18 Sep 2025: 2:00 PM
Preliminary information
Age/sex: 32-year-old male
Occupation: estate developer
臨床症状:10-day history of fever unresponsive to treatment
Epistaxis (bleeding from nose)
Hematemesis (vomiting blood)
Melaena (bloody stool)
経過
ルワンダで過去3週間に複数の病院を受診し、抗生物質を処方されたが改善せず
行程
Travelled to Rwanda about 1 month ago for tourism
Onset of symptoms occurred while in Rwanda
Arrived MMIA yesterday afternoon [17 Sep 2025] aboard Rwanda Air.
Arrived Abuja yesterday as well at 5:45 pm aboard Airpeace Airline from Lagos.
[2] 情報源 Whatsapp from a source known to ProMED 2025年9月19日
Update
疑い患者の血液検査で、confirmed NEGATIVE FOR EBOLA AND MARBURG VIRAL DISEASES(エボラ、マールブルグ陰性確認)
アルゼンチン (BUENOS AIRES)
Summary
María Ignacia Vela において、A rural worker が入院後に死亡した。初期の検査では、ハンタウイルスまたはレプトスピラ症が疑われているが、最終的な検査結果は判明していない。当局は、自宅や職場を調査しているが感染の証拠は確認できていない。
情報源 Urgente Ayacucho [in Spanish] 2025年9月16日
公衆衛生当局 The Integrated Public Health System (SISP) が農村部の労働者 a rural worker from the locality of María Ignacia Vela の死亡について報告した。現地の病院に入院後 Tandil に搬送されたが、9月13日に死亡した。
広報担当者によると、死因を確認するための臨床検体が the City of Buenos Aires に送付されている。初期検査の結果は hantavirus or leptospirosis に合致していたが、最終的に検査結果が明らかになるのは9月17日である。食品安全当局 the Food Safety Department は、the rural area of Vela にあるこの若年男性の自宅と職場を徹底的に調査したが、げっ歯類の営巣は確認されなかった。地域内で、ほかに感染が疑われる症例は報告されていない。
● エボラウイルス病 コンゴ民主共和国 (KASAÏ)
Summary
コンゴ民主共和国のエボラ・アウトブレイクへの対応は、より強力な対応策により加速している。ウイルスの迅速同定、早期治療・ケア、接触者追跡、ワクチン配布などが行われている。
● A型肝炎 ロシア (SAMARA)
Summary
the Volzhsky district of the Samara region において A型肝炎アウトブレイクが報告されており、ワクチン接種が精力的に行われている。まず the urban settlement of Smyshlyaevka を重点的に実施される。近隣の村の火災後に事態が悪化し、周辺地域にも接種ゾーンが拡張された。
● サルモネラ感染症 米国(2)
SEROTYPE LOMALINDA、FDA
Summary
The FDA はサルモネラ菌による食中毒アウトブレイクに対応しているが、アウトブレイクの原因調査はまだ始まっていない。
(PENNSYLVANIA)
Summary
ペンシルベニア州において、生ミルクの摂取を報告するサルモネラ感染症の患者の割合が増加し、過去6年間でもっとも高くなっている。州保健当局は、特に南東部地域での発生が増加しているとして、注意喚起を発出した。生ミルクの摂取は、特に脆弱なグループにとって健康リスクがあるとして、殺菌処理された製品を選ぶことを進めている。
● 食中毒 ヨルダン (IRBID)
Summary
Irbid, Jordan における食中毒アウトブレイクの調査が行われており、初期の件A型肝炎で糞便による汚染と大腸菌が原因とみられている。食品医薬品局は問題のレストランの営業停止を命じ、食品と水の詳しい検査をおこなっている。レストランのオーナーが代わった点についても調査が行われている。
● 麻疹 オーストラリア (QUEENSLAND)
Summary
Far North Queensland の麻疹アウトブレイクに関し、産科病棟を含む曝露の可能性のある場所についての注意喚起が、保健当局から発出された。バックパッカー用ホステルの感染例から始まった今回のアウトブレイクのため、病院のエリアでのマスク着用が求められている。
○ 原発性アメーバ性髄膜脳炎 インド
Summary
2025年、Kerala, India において少なくとも66例の原発性アメーバ性髄膜脳炎 confirmed cases of primary amoebic meningoencephalitis (PAM) が報告され、死者数は17例から19例とされている。患者の年齢は幅広く、新生児から高齢者に及び、Malappuram に集中しているが、他の地区からも報告されている。1962年以来の全世界の報告数が500例足らずであるところ、この地域の負荷が異例であることが示されている。
ケララ州の原発性アメーバ性髄膜脳炎:最新報告で感染66例、最大19例が死亡
Key Findings
・9月11日の報告以降、州保健当局 the Health Department in Kerala が州内の感染例および死亡例について情報を更新した。
・少なくとも66例 confirmed cases of primary amoebic meningoencephalitis (PAM) caused by Naegleria fowleri in Kerala, India, in 2025 が報告; 70例以上との報告もある。
・死者数は17例から19例とばらつきがあり、このうち9月だけで7例の死亡が確認されている。
・報告されている症例の年齢は、新生児から高齢者まで幅広く、最近の感染例は生後3か月、10歳女児、51歳男性だった。
・Malappuram District に患者が集中するも Thiruvananthapuram and other parts of the state からも報告されている。
・州内の井戸水、プール、貯水タンクの塩素消毒と、市民の教育が行われている。
情報源 BBC 9月17日
Battling a rare brain-eating disease in an Indian state
India's Kerala state のお祭り前夜 the eve of Onam に、45歳女性は救急車内で震えと意識を失いかけながら大学病院に急送された。
Malappuram district でジュースの瓶詰めで生計を立てているこの女性 the Dalit (formerly known as untouchables) woman は数日前から、めまいと血圧が高いこと以外は訴えていなかった。医師から医薬品を処方され帰宅したが、状態はどんどん悪くなり、不安が熱となり、ひどい悪寒戦慄にかわり、お祭り当日の9月5日に死亡した。
原因は、脳食いアメーバと呼ばれる Naegleria fowleri - commonly known as the brain-eating amoeba - で、鼻に入った淡水から感染し、まれな疾患であることからほとんどの医師はキャリアの中で患者に遭遇することはない。
Kerala 州では今年になって70例以上の感染例が診断され、19例がこのアメーバにより死亡している。患者の年齢は生後3か月から92歳の男性までと幅広い...
○● 結核 カナダ(2)、コンゴ民主共和国
カナダ
Summary
ケベック州 Nunavik, in northern Quebec, Canada で深刻な結核アウトブレイクが発生しており、2025年のこれまでに83例の感染が確認され、年末までに人口10万人あたり800例が感染する計算となる。保健当局によると、地域によって影響に差があり、労働力不足、住宅不足、慢性的な資金不足、脆弱な保健インフラなどが感染の増加に関係している。
Nunavik, Canada の結核が83例に増加: 年末には人口10万対800例を超えるおそれ、世界最悪感染国の1つ
Key findings
・14 isolated villages に人口約1万4千人が住む Nunavik, a northern Quebec region において、結核の著しい増加が発生ている。
・2025年初以降83例が確認されており、6月に報告された感染者数から倍増となった。
・Nunavik の結核感染の増加率は、ケベック州及びカナダ全国の感染率を上回り、年末までに人口10万人あたり800例以上になる可能性があり、これは世界中でもっとも高率のうちの1つとなる。
情報源 CBC News 2025年9月18日
Nunavik health officials look to tackle tuberculosis as region faces spike in cases
Summary
the Nunavik region において結核の増加があり、他州や全国より著しく発生率が高くなっている。労働力不足、限定的なリソース、住宅問題、不十分な保健インフラが原因とされている。
コンゴ民主共和国
Summary
Kasapa Central Prison in Lubumbashi, Democratic Republic of the Congo の受刑者800人が結核に感染し、ほか1800人に予防治療が行われていると、現地メディアが伝えている。
Kasapa Central Prison, Lubumbashi, Democratic Republic of the Congo において800人の結核感染報告:情報提供依頼
Key findings
・2025年9月17日、刑務所 Kasapa Central Prison in Lubumbashi, Haut-Katanga Province で多数の結核が報告されていると、法務大臣が明らかにした。
・現地メディアは approximately 800 prisoners with tuberculosis and 1800 prisoners receiving preventive treatment, out of an estimated 2600 detainees と報じている。
○ 蝿蛆症、新世界ウジバエ 南北アメリカ
Summary
南北アメリカ地域で、新世界ウジバエによる蝿蛆症 New World screwworm (Cochliomyia hominivorax) myiasis の再興があり、北への感染拡大の深刻な懸念と、家畜への脅威への不安が高まっている。対策として、積極的サーベイランス、動物移動の規制、不妊昆虫の放出プログラムなどが行われている。
メキシコのヒトの蝿蛆症と死亡の最新状況
Key findings
・メキシコの疫学サーベイランスシステム Mexico's Epidemiological Surveillance System (SINAVE) によると、2025年9月12日現在、49例のヒトの蝿蛆症 human cases of myiasis (caused by the screwworm fly, Cochliomyia hominivorax) in Mexico が報告されている。
・大多数(43例)の症例が Chiapas, Mexico から報告されている。
・ウジバエの感染のあった高齢女性2名(83歳、87歳)が先週死亡した; 保健当局は持病によるもので、感染との直接の因果関係はないとしている。
● 魚類の大量死 スペイン (CATALONIA)
Summary
groupers(ハタ)の侵襲性ウイルス感染が確認されたとして、Catalonia で海洋保健注意喚起が発出された。このウイルスは魚の神経系と網膜を冒し死に至らしめる。保護区内のハタの個体数への影響が懸念されている。ヒトへの影響はない。
○ リーシュマニア症 ブラジル、イヌ
Summary
1頭のイヌ a dog in Porto Velho, Rondônia の内臓リーシュマニア症 A case of canine visceral leishmaniasis (Leishmania infantum) が確認された。無症状のもう1頭も血清検査で陽性となり確認中である。深刻な人獣共通感染症で、ただちに報告することが求められている。9月に報告された今回の症例が、7月に感染が疑われていたのと同じイヌかどうかは明らかではない。
Porto Velho, Rondônia State でイヌ内臓リーシュマニア症確認:情報提供依頼
Key findings
・A case of canine visceral leishmaniasis (Leishmania infantum) was confirmed in a dog in Porto Velho, Rondônia, through PCR testing conducted by Fiocruz-RO.
・A second dog from the Planalto neighborhood, had a reactive serology; it is asymptomatic and confirmation is pending.