コレラ ザンビア
類鼻疽 インド
淋菌性結膜炎 日本、新生児 EID
○ コレラ ザンビア
Summary
2025年8月5日の Mpulungu District における流行開始以降、9月18日までに累計199例のコレラ感染と2例の死亡が報告されている。Nsama and Mbala districts から、国境を超えてタンザニアにまで感染が拡大し、葬儀のための移動と魚の取引に関係している。治療センターの設置、ワクチン接種、塩素剤配布、市民への周知などの対策が行われている。
北部のコレラ・アウトブレイクの感染199例、死亡2例に
Key Findings
・9月18日までに公衆衛生研究所 the Zambia National Public Health Institute から累計199例のコレラ感染 cumulative cholera cases と、いずれも入院患者の2例の死亡 (致死率: 1.1%) since the outbreak began on 05 Aug 2025 が報告。
・この24時間に新たに9例が確認されたが、新たな死亡例の報告なし。
・最も多くの患者報告が集中している地域は Mpulungu District (169 cases)、次いで Nsama District (16 cases) and Mbala District (14 cases) である。
・国境を超えてタンザニア Kasisi and Kipwa, Tanzania においても報告されており、葬儀のための移動と魚の商取引に関係している。
・9月18日までに7万3616 individuals に経口コレラワクチン接種が行われ;今後2週間にさらに20万人がワクチン接種の対象となっている。
○ 類鼻疽 インド
Summary
インドの類鼻疽は従来から南部及び東部の沿岸州、特に Karnataka, Tamil Nadu, Kerala, and Odisha の各州から、毎年推定2万から5万2千例が報告されている。最近、中央部 (Madhya Pradesh) に常在地域が広がり、2019年から2025年までの期間に少なくとも20か所 dostricts から約130例が確定診断されている。
類鼻疽、中部 Madhya Pradesh 州へ感染拡大:2019–2025年に20地区で130例超報告
Key Findings
。Burkholderia pseudomallei が原因の類鼻疽 Melioidosis が Madhya Pradesh, India に常在 endemic。これまで概ね coastal states (Karnataka, Tamil Nadu, Odisha) に限局と認識されていた。
・the All India Institute of Medical Sciences (AIIMS), Bhopal の報告によると、過去6年間に130例以上の at least 20 districts in Madhya Prades の類鼻疽感染例 laboratory-diagnosed cases of melioidosis が報告されている。
・結核と間違われやすく、診断の誤りや遅れにつながっている。
・治療を受けられずに死亡する症例がおよそ40%と報告されている。
・主な症状は、遷延する発熱、咳嗽、胸痛と、結核治療に反応しないこと。
・Madhya Pradesh における感染伝播には稲田の土と水の汚染が関係し、広大な水耕面積と豊富な水資源が感染拡大につながっている。
・農業従事者の感染が最も多く、糖尿病やアルコール多飲ではリスクが高まる。
● 淋菌性結膜炎 日本、新生児
Summary
フルオロキノロン耐性菌による新生児の淋菌性結膜炎の症例について報告する。新生児の結膜炎予防対策と治療戦略の限界が示されている。筆者らは、新生児の感染予防策として、母体の性感染症スクリーニングの重要性を強調している。また抗微生物薬耐性菌が広がる中、現在のルーチンの予防点眼薬は不十分であることが示唆されている。
情報源 Emerging Infectious Diseases(EID)2025年9月18日
原著 Neonatal gonococcal conjunctivitis caused by fluoroquinolone-resistant Neisseria gonorrhoeae. Emerg Infect Dis. October 2025 [early access]
1881年に Carl Credé により予防点眼が導入されて以来、新生児・淋菌性結膜炎は著しく減少した。使用される薬剤は、硝酸銀からエリスロマイシン erythromycin or テトラサイクリン etracycline ophthalmic ointments(眼軟膏)and ポビドン/ヨード povidone/iodine に替わった。日本では1970年以降 erythromycin/colistin ophthalmic formulations が用いられてきたが、2015年に erythromycin/colistin preparations が製造中止となり、一部の施設は neonatal prophylaxis にフルオロキノロン fluoroquinolone-based ophthalmic agents を採用した。フルオロキノロン耐性淋菌が成人で報告されているが、新生児の感染例ではまれである。
今回、フルオロキノロン耐性淋菌による新生児のブレークスルー結膜炎 a breakthrough case of neonatal gonococcal conjunctivitis と、さらにはクラミジア concurrent Chlamydia trachomatis bacteria infection にも同時感染していた症例について報告する。新生児結膜炎の予防と管理の方法を見直す必要性が明らかになった。
2023年、生後12日目の女児が静岡県の病院を受診し、膿性眼脂と眼周囲の腫脹が認められた。自然に陣痛が発来した満期・経腟分娩で出産された。妊娠12週の母体のクラミジア検査は陰性 a negative C. trachomatis nucleic acid amplification test であったが、淋菌検査は行われていなかった。出生直後のフルオロキノロン点眼による感染予防措置を受けた。
生後4日目から膿性の眼脂を認め、1日3回のレボフロキサシン点眼を行うも悪化した。10日目に眼瞼浮腫と眼周囲の著明な炎症を生じ眼科に紹介された。
結膜から培養検体を採取し、セファロスポリン点眼による治療を開始した。眼脂の培養検査で淋菌が確認され、入院治療が開始された。
血液培養検査で陰性の結果が得られた48時間後に、セフォタキシム cefotaxime の経静脈投与を中止した。3病日目までに眼症状の改善を認めた。
3病日目の咽頭スワブ検体がクラミジア C. trachomatis 陽性と確認され、アジスロマイシン azithromycin が投与された。
患児は完治し、再発していない。
分離された淋菌は B196-JP22 と呼ばれる levofloxacin 耐性菌で、アジスロマイシンの最小発育阻止濃度も上昇しており elevated MIC for azithromycin (MIC 0.75 μg/mL)、ペニシリン penicillin G (1 μg/mL) 感受性は低下していた。
今回のケースでは3つの問題 a triple failure が示された:
・母体の性感染症スクリーニングが不十分
・フルオロキノロン点眼薬による予防および治療は、多剤耐性淋菌には無効
十分な母体スクリーニングが重要で、米国のガイドライン US CDC guidelines では、25歳未満で感染リスクのあるすべての妊婦に対して、第2トリメスターに繰り返し N. gonorrhoeae and C. trachomatis を検査することを推奨している。これに対して日本の妊婦健診では一般的に、妊娠初期に1回のスクリーニングが行われるだけで、淋菌の検査はあまり行われていない。
先進国では全新生児に予防点眼を行うことについて、クラミジア感染を予防することはできず、淋菌結膜炎は少数であることから、その必要性に関する議論が高まっている。
欧州では複数の国で予防が中止されたが、新生児眼疾患 neonatal ophthalmia は増えていない。
日本国内において、成人の間でフルオロキノロン耐性淋菌の頻度は高く、フルオロキノロン耐性率は80%を超え、最大20%がマクロライド耐性を有する。
Genomic analysis of our isolate suggests further spread of resistant organisms in Asia, highlighting the importance of identifying this isolate in the region.
新生児淋菌結膜炎の発生率は低く、日本国内での薬剤耐性が蔓延しつつあることから、ルーチンの予防点眼は不十分であり、その代わりに、母体の淋菌感染について、特に妊娠後期にスクリーニング systematic screening を行うことが、母子垂直感染予防により有効であると考えられる。
References
● 原因不明の疾患 ナイジェリア、キューバ
ナイジェリア (FEDERAL CAPITAL TERRITORY) 、ルワンダから
Summary
Abuja の保健当局がエボラ・アウトブレイク発生の可能性に対してサーベイランスと準備体制を強化している。ウイルス出血熱が疑われる患者発生に対する市民の不安への対応である。
キューバ (MATANZAS)
Summary
the Matanzas province の複数の村々で原因不明の疾患が広がっており、高熱と腫脹の症状が認められている。住民らは検査が不足して受けられず、必要な医薬品や食料が入手しづらい状況にある。停電による蚊族媒介性疾患が関係することが疑われている。
● COVID-19 シンガポール
Summary
the XFG COVID-19 variant 変異株が新興し現在国内の優位株となっていることに対し、シンガポール政府当局は追加の公衆衛生対策を実施する予定はない。従来株に比べて重症化する兆候はみられないと説明している。また、現行ワクチンの有効性が保たれており、ハイリスクの人々には再接種を勧めるとしている。
● レジオネラ症 米国 (IOWA)
Summary
アイオワ州Marshall County, Iowa において、レジオネラ肺炎が著しく増加しており、当局は感染源として冷却塔を疑って調査を行っている。
● ボツリヌス食中毒 フランス (OCCITANIE)
Summary
ボツリヌス食中毒が疑われる1例が発生し、保健当局が Le Tapenadier 社に対し、マーケットやオンラインで販売されているガーリックの砂糖漬けなどの缶詰の回収を命じた。
● 東部ウマ脳炎 米国 (SOUTH CAROLINA)
Summary
最近、東部ウマ脳炎による死亡が1例発生したと、サウスカロライナ州公衆衛生当局が明らかにした。
● 腸管出血性大腸菌 EHEC 米国 (WASHINGTON)
Summary
地元のマーケットが関係する大腸菌感染例の調査が行われており、同マーケットが閉鎖されている。
● 旋毛虫症 アルゼンチン (CORDOBA)
Summary
州内の複数の地域にまたがる旋毛虫症アウトブレイクが発生し、The Córdoba Ministry of Health が衛生上の注意喚起を発出した。調査によると、自家製ソーセージを含む、生または加熱不十分な豚肉食品が関係している。症状として発熱、筋肉痛、消化器症状などが認められる。
○ Jorge Lobo's disease(ロボ病)ブラジル
Summary
ロボ病は、培養不可能な真菌 Paracoccidioides lobogeorgii (previously Lacazia loboi) による慢性感染症で、主としてアマゾン盆地と中米の人々が感染している。最も多くの感染例が報告されているのは Acre state in Brazil である。臨床経過の特徴として、再発と治療への反応が不十分なことがある。小児の報告は少ないが、報告数が実数を下回っている。
ブラジルの小児のロボ病(ジョージ・ロボ病)
Key findings
・Brasiléia, Acre state, Brazil 近郊の森林エリアの小児1名が、2017年のダニ刺咬後、2018年に病変に気づかれ、ジョージ・ロボ病 Jorge Lobo's disease (JLD) を発症した。
・初期病変は、軽度の炎症から結節に進展し、1年後に組織病理学的に確定診断された。
・患者は9年の経過中に緩徐な進行と再発、ハンセン病治療等への部分的反応、外科切除、イトラコナゾールを経験した。
・辺境の地理的要因が治療継続・定期的フォローアップを阻み、2022年にハンセン病サーベイランスの中で再発例として発見された。
・2024年6月までに初発部位に5cmの再発病変が出現し、抗真菌薬による追加治療と定期的モニタリングが必要となった。
情報源 EID 2025年10月
Jorge Lobo’s Disease in Child with Tick Exposure, Brazil
Abstract
○ チクングニア 中国
Summary
中国広東省のチクングニア感染伝播は、2025年8月中旬の合計8000例超から、8月下旬には仏山市の新規感染例が50例未満となるまで減少した。しかし、9月20日に江門は、市内で1714例が確認されていることへの対応として a level III public health emergency response を発動し、季節性の感染リスクの継続が示された。
広東省・江門で1714例のチクングニア感染、レベルⅢ公衆衛生緊急対応開始
Key findings
・2025年7月16日の開始以降9月19日までに、江門 Jiangmen (Guangdong Province, China) は累計1714例のチクングニア感染 confirmed cases of chikungunya fever を報告。
○ 高病原性鳥インフルエンザ 南アフリカ
Summary
南アフリカで、家きん及び野鳥の高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)が再興している。2025年5月以降、448羽以上のカモメ、ペリカン、ウなどの野鳥が感染し、348羽の死亡が発生した。家きんでは数千羽が感染し、死亡および処分される結果となっている。
Western Cape の野鳥と4州の養鶏場で H5N1 高病原性鳥インフルエンザアウトブレイク報告
Key findings
・2025年9月20日の時点で、11件の高病原性鳥インフルエンザアウトブレイク outbreaks of highly pathogenic avian influenza (HPAI) H5N1 in wild birds and a backyard premise in the Western Cape が報告されている。
・2025年5月1日からアウトブレイクの発生があり、7月4日に公式に確認された。
・感染した鳥類は、クロオオショウビン Black gosh bbawk, カモメ Grey-headed gull, Hartlaub’s gull, Kelp Gull, ウ Crowned cormorant, シギ Whimbrel, ペリカン Great White Pelican, Cape cormorant, アジサシ Common Tern, Swift tern, and トキ Sacred Ibis である。
・2025年6月以降、6件の家きんのアウトブレイク outbreaks of HPAI (H5N1) have been reported in poultry premises が報告されており、野鳥との接触による感染伝播による。
情報源 WOAH-WAHIS. 08 Sep 2025
South Africa - Influenza A viruses of high pathogenicity (Inf. with) (non-poultry including wild birds) (2017-)